(これは私が以前別ブログに載せていた文章を編集し再掲したものです)
私はFF6をやったことがありません。10代の頃、兄が床にあぐらをかいてピコピコ必死にやっているのを横でじーっと立ち見していただけです。作中の音楽があまりにも美しかったので、兄に「シッシッ」と言われるまで突っ立って聴き惚れていました。
実は、私はFFの作中音楽を作曲した植松伸夫さんと同じく、プログレッシブロック(プログレ)のヲタクです。
プログレッシブロックとは、「進歩的なロック」という意味です。1960年代末にイギリスで勃興し、そこから70年代前半にかけて最盛期を迎えました。それから半世紀経った今でも活躍しているバンドがたくさんあります。
ちなみに私は、2021年12月にキングクリムゾンの来日公演を観た者です。3人ものドラマーを抱える彼等は、老齢を迎えてもプログレス(進歩)を続けていることを実感しました。
プログレミュージシャンたちは、ロックにジャズやクラシックや民族音楽などの要素を混ぜ、変拍子(7拍子や13拍子など)を使い、転調とテンポ変化を繰り返し、レコードの片面をまるまる使うほど長大な曲を作りました。1曲の演奏時間が20分超えの曲などザラにあります。
私は10代の頃から、『ジョジョの奇妙な冒険』好きの兄の影響でキングクリムゾンやイェスやピンクフロイドなどを聴いてきました。
ジョジョの作中に「キングクリムゾン」というスタンド(守護霊)が登場するそうなので、その元ネタがイギリスのバンドであることを知った兄は、一気にプログレ沼にはまり込み、私まで引きずり込みました。
こうしてプログレ沼で遊んできた私は、ファイナルファンタジーⅥラスボス曲「妖星乱舞」(作曲: 植松伸夫) の第4楽章(ケフカ戦)の元ネタが分かってしまいました。
植松さんのプログレ好きは以前から知っていましたが、こんなにもたくさんの曲をネタにしているなどとは思いもしませんでした。
以下、ネタにしたと思われる曲を挙げていきます。
・ヨーロッパ特急(クラフトヴェアク/クラフトワーク)
・タルカス(ELP)
・神秘(ピンクフロイド)
ケフカ戦のメロディはこの3曲の一部を切り取って少々の改変を加え、組み合わせたものです。
まずはこれをお聴きください。
暗く激しいロックと荘厳な宗教音楽を混ぜたような壮大な曲です。ゲーマーに限らず、この曲に聴き惚れた方は多いのではないでしょうか。
そしてここからは、元ネタかもしれない曲のリンクを貼っていきます。
・クラフトヴェアク(クラフトワーク)「ヨーロッパ特急」
Kraftwerk"Trans Europa Express"
最初のメロディーに注目してください。ケフカ戦音楽の冒頭にそっくりです。
クラフトヴェアクは、ドイツのプログレバンド、というか、YMOと同じテクノポップバンドです。『アウトバーン』『レディオアクティヴィティ(放射能)』『電卓』など、シンセサイザーで奏でる彼らの機械的な音楽は、YMOに影響を与えました。
クラフトヴェアクは2012年に来日し、幕張メッセで開かれた反核イベント「NO NUKES 2012」で『レディオアクティヴィティ』の福島バージョン(日本語歌詞)を披露し、反核と平和への意志を示しました。ちなみに日本語歌詞は坂本龍一さんが監修したそうです。
YMOの生き残りは、もう細野晴臣さんだけになってしまいましたね。フローリアン・シュナイダーなど、クラフトヴェアクのメンバーもちらほら鬼籍に入ってきています。
ELP(エマーソン・レイク・アンド・パーマー)「タルカス」
Emerson, Lake & Palmer "Tarkus"
0:33〜0:58に注目してください。ケフカ戦の音楽の0:30〜1:53に似ています。一部「魔導師ケフカ」という曲の一節が入りますが。
ちなみに「タルカス」という曲自体は20分超えの大作で、2012年のNHK大河ドラマ『平清盛』にオーケストラ版が使われています。このドラマの劇伴を担当した吉松隆さんは、「タルカス」のオーケストラアレンジをなさった方です。ELPの生き残りは、ドラマーのカール・パーマーだけになってしまいました。
「ぼくちんケフカだじょー」という雰囲気のふざけた曲です。
ピンクフロイド「神秘」
Pink Floyd "The saucerful of Secrets"
8:37〜最後が、ケフカ戦音楽の1:53〜3:05に似ています。おぞましさと荘厳さを両方感じます。
ピンクフロイドは1967年のイギリスで、『夜明けの口笛吹き』という凄まじいアルバムを放ってデビューしました。
しかし初代リーダーのシド・バレットが麻薬中毒や精神病で死にそうになったので、バンドはセカンドアルバム『神秘』制作中にシドを解雇しました。この「神秘」という曲はセカンドアルバムの表題作です。
それ以降ピンクフロイドは、シドのギターの師匠だったデイヴィッド・ギルモアを迎え入れて活動していましたが、今はデイヴィッドとベーシストのロジャー・ウォーターズの仲が非情に険悪になっており、なかなか難しい状況です。ドラマーのニック・メイスンがなんとかとりなしてくれるといいのですが。
シンセサイザー担当だったリック・ライトは、天国からどんな気持ちで彼らを見下ろしているでしょうか。